太平洋戦争中、約19万の日本の将兵が、その命を失ったビルマ——。本作は、タイ・ビルマ国境付近で敗戦を迎えた後、祖国に還らなかった6名の日本兵、すなわち「未帰還兵」を描く。敗戦から60余年を隔て、戦争の記憶が薄れつつあるいま、90歳を前後する彼らを20代の監督・松林要樹がとらえた。2005年から3年に渡る取材で、松林はもうひとつの戦後史ともいうべき彼らの暮らしに寄り添い、新たな証言を記録した。それは、ある未帰還兵の現代日本への遺言となった。製作中、2名が鬼籍に入ったからだ。なぜ彼らは日本に還らなかったのか?南国の激しい雨の間隙、晴れやかな日差しの中で、穏やかに老後を迎える元兵士たちの平和な日常に、漆黒の時代の闇が潜んでいる。
■松林要樹監督【WEBサイト】