ニューベッドフォード――かつて世界の捕鯨の中心であり、文豪ハーマン・メルヴィルの『白鯨』をインスパイアしたあの港町から、我々は巨大な底引網漁船アテーナ号とともに絶海へむかう。危険で過酷な漁は数週間にわたり、船は漆黒の海を航く。そこでは昼と夜、美と恐怖、生と死とが不気味に溶けあい、やがて我々の時空の感覚を狂わせていく。
監督のルーシァン・キャステーヌ=テイラーとヴェレナ・パラヴェルは映像作家であり、ハーバード大学「感覚民族誌学研究所」の人類学者でもある。二人はこれまで誰も試みたことのないやりかたで人間、海、機械装置、海洋生物といった現代商業漁業にかかわるすべてを鮮烈に、生々しく活写していく。カメラは網の中でもがく魚たちや、上空を飛び交うカモメの目線となり、虚空を舞い、海中へとダイブする。泡立つ波音、クレーンの軋み、波に揉まれた船体があげるうめき。圧倒的な映像と音響の奔流。『リヴァイアサン』は、そのただなかに我々を放りこむ。もはやこれは黙示録の体験である。
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