この砦が、最後の希望ーー
辺野古、高江、宮古、石垣ーなぜ闘うのか? 壊れかけたこの国の、自由と平和をめぐる「最前線」。
英題:The Targeted Island: A Shield Against Storms
監督・ナレーション:三上智恵
プロデューサー:橋本佳子 木下繁貴 撮影監督:平田守
編集:砂川敦志 監督補:桃原英樹 音楽プロデューサー:上地正昭
協力:沖縄タイムス社 琉球新報社 製作協力:沖縄記録映画製作を応援する会
製作:DOCUMENTARY JAPAN 東風 三上智恵 配給:東風
2017年|日本|119分 (C) 『標的の島 風かたか』製作委員会
2017年 山形国際ドキュメンタリー映画祭 特別招待
2018年 第91回キネマ旬報ベスト・テン 文化映画 第2位
「標的の島」とは、沖縄のことではない。それは今あなたが暮らす日本列島のこと。
2016年6月19日、沖縄県那覇市。米軍属女性暴行殺人事件の被害者を追悼する県民大会で、稲嶺進名護市長は言った。「我々は、また命を救う“風かたか”になれなかった」。「風(かじ)かたか」とは風よけ、防波堤のことだ。
沖縄県民の8割の反対を黙殺した辺野古の新基地建設、全国から1000人の機動隊を投入して高江で強行されるオスプレイのヘリパッド建設。現場では多くの負傷者・逮捕者を出しながら、激しい抵抗が続く。さらに宮古島、石垣島でミサイル基地建設と自衛隊配備が進行していた。
なぜ今、先島諸島を軍事要塞化するのか? それは日本列島と南西諸島を防波堤として中国を軍事的に封じ込めるアメリカの戦略「エアシーバトル構想」の一環であり、日本を守るためではない。基地があれば標的になる、軍隊は市民の命を守らない——沖縄戦で歴史が証明したことだ。だからこそ、この抵抗は止まない。この国は、今、何を失おうとしているのか。映画は、伝えきれない現実を観るものに突きつける。
監督は『標的の村』『戦場ぬ止み』の三上智恵。大学で民俗学も講じる三上が描くのは、激しい抵抗や衝突だけではない。エイサー、パーントゥ、アンガマ、豊年祭。先祖から子孫へと連なる太い命の幹、権力を笑い飛ばし、豊穣に歓喜する農民の誇りと反骨精神。島々の自然と歴史が育んだ豊かな文化がスクリーンに咲き乱れる。そして、県民大会で古謝美佐子が歌う「童神」、辺野古のゲート前でかき鳴らされる三線の音色。高江のテントで「兵士Aくんの歌」を歌う七尾旅人のまわりには全国から駆けつけた若者たちの姿があった。この一年で安全保障政策を大転換したこの国で、平和と民主主義を守る闘いの「最前線」はどこか? それに気づいた人々が、今、沖縄に集まっているのだ。