2月27日(土)より、東京・ポレポレ東中野、東京都写真美術館ホールほか全国順次公開
小森はるか+瀬尾夏美『二重のまち/交代地のうたを編む』
映画の舞台は、東日本大震災で津波の被害を受けた陸前高田。出来事の体験者から非体験者へ、遠くの未来へ、どうしたらその記憶や記録を手渡していくことができるのか? 本作は、この大きな問いに、新進気鋭のアーティスト「小森はるか+瀬尾夏美」が挑んだドキュメンタリー映画です。東日本大震災発生から10年となる今年、一人でも多くの人にご覧いただきたい作品です。
✨予告編が完成✨
陸前高田を訪れた4人の若者たちが、まちの人々の話を聞き、それを自らの言葉で語り直すプロセスを映し出した予告編となっております。
予告編ディレクターは、小森はるか監督『息の跡』でプロデューサー・編集を務め、『阿賀の記憶』(佐藤真監督)、『ニッポン国VS泉南石綿村』『水俣曼荼羅』(原一男監督)など優れたドキュメンタリーの編集を手がける秦岳志氏。
【予告編はこちら】
✨コメントを紹介✨*五十音順/敬称略
赤坂憲雄氏(民俗学者)、岡田利規氏(演劇作家・小説家)、小野和子氏(民話採訪者)、寺尾紗穂氏(文筆家・音楽家)、こうの史代氏(漫画家)からのコメントが到着しました。さらに、七尾旅人氏(シンガーソングライター)、濱口竜介氏(映画監督)からはロングメッセージが届きました。
二つのまちを往還する声に、身を寄せる旅人たち。語りえぬ受苦に寄り添い、ただ共に在ること。ていねいに想うこと、伝えること。災厄の記憶は風化ではなく、浄化を、と囁く声がする。
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赤坂憲雄(民俗学者)
忘れられるべきでない出来事・思い。それが、しかし果たしてこの自分にそれを語り継ぐ資格はあるか?と逡巡する若者たちによって、その逡巡ごと、この映画の中で確かに伝えられている!
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岡田利規(演劇作家・小説家)
この足の下に、もう一つの町が存在する――この感覚が捉える切実な詩情にうたれた。地割れと怒涛に町は消えたのではない。そこに生きて「在る」のだ、今も。四人の若者たちの存在は、それを語りつづけるために蒔かれる種なのだ。
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小野和子(民話採訪者)
これは、ちいさなちいさなタネのような映画。笑みや涙がこれからいくたびも心に降りつもれば、しずかに目覚めて根と葉をのばす。それがいつだとしてもその芽を見失わないように、心を澄まして生きてゆこう、そう決めました。
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こうの史代(漫画家)
どのように足掻いても
私はあなたになれず
あなたの話を再現することもできないのだと
表現者たちが気づいたとき
紡がれた物語はそれぞれに光り始める。
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寺尾紗穂(文筆家・音楽家)
3.11 震災の年から10 年に渡って陸前高田に滞在し、地元の方々とふれあい、失われていく物語を記録し続けて来た瀬尾夏美さんと、小森はるかさん。初めて出会った日、まだ二十歳そこそこだった彼女たちの存在は、僕が「Memory Lane」のような曲をいまも変わらず歌い続ける理由になっていた。青春期の丸ごとと言ってよい年月を費やして、ただ真摯にひとつの景色を見つめ続けた2 人の記念すべき映画が、「人々の記憶を代弁することの困難さ」への言及で幕を下ろした時、言いようのない感動を覚えた。防潮堤の下に埋もれた、かつての通学路、思い出の小道。「二重のまち」の底層にたゆたう、愛しい人々の記憶。その輝きを、悲しみを、損なうまいと、慎重に言葉を選ぼうとする、いつかの2 人のような、若者たち。新しい語り手たちが抱える懊悩。記憶のバトンは継がれていく。過去のために、現在のために、未来のために。この映画を観た誰かが、自らの足元にふと目をやるだろう。アスファルト、コンクリート、土、草、砂。靴底を支える地面の、その下。今の私たちを成り立たせる、かつての街について、想像を巡らせずには居られないだろう。すべては過程の中にあり、けして終わっていない。
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七尾旅人(シンガーソングライター)
作者たちによって「編む」こととして提示された一連の行為は、観客にとっては不可解な儀式の連続でもある。なぜ聞くこと、話すこと、そして読むことを繰り返しているのか、それが観客に知らされることはない。観客は手探りをしながら、この作品と付き合う必要がある。かえってそのことで発される一言一言が、一つの事件のようにも響いてくる。人の声を聞くことを生業としている者として言えば、こんな声を聞き続ける体験はほとんどない。自分の言葉を、自分の身体から切り離さないように発する人たち。しかしだからこそ、その一言は事態をどこかへ急に連れていきはしない。
彼らは、何かをし「あぐねて」いる。そのことはわかる。結論を早急に求める人や、既に出してしまっている人にはこの停滞にも似た「あぐねる」は内向的か、愚かにも映るだろう。しかし、キャストとして選ばれた4 人の若者は、むしろ各々に固有の聡明さによって「あぐねる」のだ。「編む」という語から示唆される交錯は人との出会いや対話として、上下動は想像の駆動として現れる。それはむしろ、容易に答えに至ることを徹底的に迂回するための営みとしてある。「あぐねる」ことが具体的な行為として、運動として提示されていることが、この記録・作品の計り知れない価値だ。
『二重のまち』は、あらゆる場所が「二重」である可能性(もしくは事実)を提示して終わる。私たちにも「あぐねる」ことが必要なのかもしれない。だが現実に、それが可能な場を構築し、保持することの労苦もまた計り知れない。誰かがやらなくてはいけないが、誰でもできるわけではない。瀬尾・小森の十年の営為に、心からの敬意を表する。
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濱口竜介(映画監督)
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❖3月6日(土)より、特集上映「映像作家・小森はるか作品集 2011-2020」をポレポレ東中野にて開催します。劇場未公開作を含む全9作品(7プログラム)を一挙上映予定です。(*詳細は追って発表いたしますので、公式HPなどを引き続きチェックください!)
❖本作の中で朗読される物語、書籍『二重のまち』(絵・文:瀬尾夏美)が書肆侃侃房より2月中旬発売いたします。
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