ある港町のお宮にたくさんの猫が住み着いたそうな
めでたし、めでたし――なんてそう簡単にはいかんなあ
監督・製作・撮影・編集:想田和弘 製作:柏木規与子 配給:東風
2024年|119分|日本|16:9|カラー|ドキュメンタリー
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ニューヨークから小さな港町へーーー
瀬戸内の風光明媚な港町・牛窓。古くから親しまれてきた鎮守の社・五香宮(ごこうぐう)には参拝者だけでなく、さまざまな人々が訪れる。近年は多くの野良猫たちが住み着いたことから“猫神社”とも呼ばれている。2021年、映画作家の想田和弘とプロデューサーの柏木規与子は、27年間暮らしたニューヨークを離れ、『牡蠣工場』(15)や『港町』(18)を撮ったこの牛窓に移住した。新入りの住民である夫婦の生活は、瀬戸内の海のように穏やかに凪ぎ、時に大小の波が立つ。猫好きのふたりは、地域が抱える猫の糞尿被害やTNR活動、さらには超高齢化といった現実に住民として関わっていくことになる。
営みに目を凝らし見えてくるもの
伝統的なコミュニティとその中心にある五香宮にカメラを向ける想田は「映画監督になった理由」を問われ、「これ映画になるの?」と突っ込まれる。そんなやりとりの愛おしさ、想田流“参与観察”ならではのハプニング。小さな対立と不意に展開する幸福な偶然。四季折々の美しい自然のなか、生きとし生けるものが織りなす限りなく豊かな光景。それは愉快で厳しく、シンプルで複雑な世界の見取り図でもある。『精神0』から4年、記念すべき観察映画第10弾となる本作は、世界各国の映画祭でSOLD OUTが続出し、熱狂の拍手で迎えられた。これは、作家自身の物語であり、他者との共存を想うあなたの物語。